歩行はなぜ認知症予防に繋がるのか

今回は認知症と言う社会問題について少し触れてみたいと思います!

現在の日本は世界No.1の超高齢社会を迎えており、確実に介護保険制度を利用される方が増えてきています。そしてその要因は以下のグラフの通りとなっています。

介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人(以下「要介護者等」) は、平成 30 年度末で 645.3 万人となっており、平成21年度末(469.6 万人)から175.6万人増加している。また、要介護者等は、第1号被保険者の18.3%を占めている。

また、65~74歳と75 歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合を見ると、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.4%、要介護の認定を受けた人が 2.9%であるのに対して、75 歳以上では要支援の認定を受けた人は8.8%、要介護の認定を受けた人は23.0%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇する。

令和3年版高齢社会白書より
令和3年版高齢社会白書より

なんと介護が必要となった主な原因の第1位が認知症なんですね!

認知症にも様々種類があり、種類によって特徴や対応も異なります。医学的な処置(内服)が必要となるケースもありますが、できればまずは内服に頼らずに進行を遅らせたり、予防できるのが一番ですよね。今回は運動と認知症の関係性についてお伝えさせていただければと思います。

具体的な報告を交えてお伝えさせていただきますね!

歩行を含む身体活動と高齢者の認知機能について

Physical Activity, Including Walking, and Cognitive Function in Older Women

Weuve J, Kang JH, Manson JE, Breteler MMB, Ware JH, Grodstein F. Physical Activity, Including Walking, and Cognitive Function in Older Women. JAMA. 2004;292(12):1454–1461. doi:10.1001/jama.292.12.1454

Walking and Dementia in Physically Capable Elderly Men

Abbott RD, White LR, Ross GW, Masaki KH, Curb JD, Petrovitch H. Walking and Dementia in Physically Capable Elderly Men. JAMA. 2004;292(12):1447–1453. doi:10.1001/jama.292.12.1447

1つ目の報告は70~80歳の女性の認知機能テストの成績と日頃の運動習慣の関係を調べた研究になります。日頃よく歩く人はテストの成績が良く、少なくとも1週間に90分(1日あたりにすると15分程度)歩く人は、週に40分未満の人より認知機能が良いことがわかっています。また、2つ目の報告は71〜93歳の男性の歩行量と認知症の関係を調べた報告で、端的に言うと一般的なウォーキングとアクティブなライフスタイルが認知症のリスク低下と関連していることを示しています。

では、なぜ歩行が脳の高次機能に影響を与えるのでしょうか。

脳の働きに欠かせない脳血流量とアセチルコリン

脳が正しくはたらくためには、絶えず十分な血液が流れている必要があります。脳の働きを担う神経細胞は、血流不足にとても弱く、再生能力もありません。高齢者やアルツハイマー型認知症患者では、大脳皮質や海馬(記憶などの高次機能を司る部位)で脳血流が低下していることが知られています。この大脳皮質や海馬には、大脳の奥から伸びてきてアセチルコリンという化学物質を放出する神経(アセチルコリン神経)が来ています。このアセチルコリン神経を活発にすることによって、大脳皮質や海馬のアセチルコリンが増え、脳の内部の血管が広がり血液の流れが良くなること、アセチルコリンが脳を守る重要なタンパク質(神経成長因子)を増やすこと、また、アセチルコリン神経の働きを高めることにより、神経細胞のダメージを軽減すること。が東京都健康長寿医療センター研究所の報告によって明らかにされています。アセチルコリン神経が、脳の健康を維持するうえでとても大切だと言うことです。

歩行速度は関係ない!?

(今回は運動と認知症に関してのお話になるので、心肺機能や身体機能とは切り離してお考えください!一般的には早歩きも交えられると、身体にとっては良いとされていますよ!)

実は、脳の健康を維持するうえでとても大切な神経伝達物質であるアセチルコリンは、歩行速度に関係なく、歩行することによって増えることが分かっています。また、歩くことができない場合でも、皮膚や筋、関節に刺激をあたえることによって同様の効果が得られることも分かっています。ゆっくり歩いたり、歩けない人は関節や筋肉に負荷をかけるだけでも認知症予防の効果があると言えるんですね。ちなみに、からだのどの部位の刺激でも血流増加の効果がみられますが、特に手や足への刺激はより効果的とされているそうです。

コグニサイズについて

コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)と言います。Cognitionは脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題が該当し、Exerciseは各種の運動課題が該当します。運動の種類によってコグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなど、多様な類似語があります。コグニサイズは、これらを含んだ総称としています。

https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html

運動によって認知症予防ができると言うことはここまでの報告でご理解いただけたかと思います。実際、介護の現場ではコグニサイズで知られていることも多いので、運動の重要性に関してはご存知の方も多いですよね。リアクラでは、コグニサイズの理論に基づいて開発されたコグニバイクの第3世代を導入しています。これまでよりも課題設定がリアルタイムで更新されるようになり、よりギリギリの認知課題に取り組めるようになっています。

まとめ

今回は運動と認知症の関連について、文献による報告を交えてお伝えさせていただきました。

当たり前なんですが、やっぱり動くって大事ですね!自分のことは自分でできる、元気な100歳を目指して、リアクラで科学的根拠に基づいてお一人お一人に適した機能訓練を提供し、利用者様が活き活きと生きる人生の実現をお手伝いさせていただきます!

興味がある方はコメントやお問い合わせからご連絡ください!お待ちしております!

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