読んでいただきありがとうございます!!!
冒頭から感謝の言葉で始めて見ました!読んでくださる皆様に少しでもお役立ち情報をお届けできればと思います!
脳卒中になるとどうなる?
この記事を見ていただいている方は既に脳卒中のことはご存知かと思いますが、改めて整理の目的で書かせていただきますね!
まず、脳卒中とは以下のものを総称したもになります!
- 脳卒中の分類
- 1)脳梗塞
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脳血管が何らかの理由によって閉塞してしまった状態。心臓の機能不全を由来とした心原性脳塞栓症、頸動脈や脳血管そのものの動脈硬化を由来とするアテローム血栓性脳梗塞、脳みその深部にある穿通枝と呼ばれる小さい血管の損傷によるラクナ梗塞などに分類されることが多い。それぞれ原因によって栄養される脳の範囲が異なるため、根本から詰まる方が後遺障害が大きくなりやすい。詰まった血の塊が溶けたり(溶かしたり)、何かしらの理由で再開通すると一過性のもので済んでしまうこともある。梗塞時間が長くなると脳細胞が死んでしまい機能不全が完全には治らないものになる。
- 2)脳出血
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部位により大脳出血、小脳出血、脳幹出血に分類される。出血した血が脳を圧迫することで脳の機能障害が出現する。出血部位によって症状は異なり、出血量が多いほど多くの部位で圧迫が強くなる。脳内で出血した血液は自然に吸収されるのを待つか、出血を取り除く処置をすることになる。こちらも脳梗塞同様圧迫時間が長くなれば脳細胞が死んでしまった状態になり完全な回復はしないものになる。
- 3)くも膜下出血
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脳動脈瘤と言われる血管のふくらみが突然破裂することによって出現するものがほとんど(80~90%)とされている。クモ膜と脳の間に血が溜まることで脳みそを圧迫して症状が出現する。激しい頭痛が特徴的。脳出血同様脳細胞が死んでしまうと完全な回復はしない。
大雑把に分類すると以上のようになります。原因や脳の損傷の過程に違いはあれど、共通点としては脳細胞が死滅してしまうという点になります。多くの場合、完全な回復は極めて困難となるのが現実です。
そのため、脳卒中後の歩行獲得を考える場合は“治る”という表現よりも“再建”“再獲得”という考え方がとても大切になるんですね!リアクラの語源となっている“再獲得”です!
脳卒中後の歩行再建に重要な考え方
脳卒中後にはただ必死に歩く練習を頑張る、というよりも動き方を意識しながら動くことが大切になります!
何故なら、動かなくなった手足に問題があるのではなく、指揮系統の上位にあたる脳の障害で動かなくなっているから、ですね!
その上で、何を意識していく必要があるかということを、研究報告など交えながら書かせていただきますね!
歩行速度と転倒リスク
脳卒中片麻痺患者の歩行再建において、歩行速度の向上は重要な目標の一つです。歩行速度は、歩行能力の指標として広く用いられており、連続歩行距離、外出範囲、外出頻度、生活の質(QOL)などと密接に関連しています。速く歩けると、日常生活の動作や社会参加がしやすくなり、自立度や満足度が高まります。また、歩行にかかるエネルギー消費が少なくなり、疲労感が軽減されます。さらには、歩行の安定性やバランス能力が向上し、転倒のリスクが低減されることまで報告されています。
0.4 m/sec 以下では,屋内生活にとどまり,社会参加度はほとんどゼロに近い。歩行速度 0.4 m/sec ~ 0.8 m/sec の地域生活者は,屋外歩行が一部制限され,従って,社会参加度も中等度だった。他方 0.8 m/sec 以上の速度の地域生活者は制限無く屋外歩行が可能で,そのため,社会参加も十分達成することができた
Perry J, Garrett M, et al.: Classification of walking handicap in the stroke population. Stroke 1995; 26:982‒989.
Awad, L.N., Lewek, M.D., Kesar, T.M. et al. These legs were made for propulsion: advancing the diagnosis and treatment of post-stroke propulsion deficits. J NeuroEngineering Rehabil 17, 139 (2020). https://doi.org/10.1186/s12984-020-00747-6
ここまで色々な報告が無くても何となく感じてみえる方も多いかと思います、速く歩けると良いことが多いのです!!
ですが、脳卒中片麻痺患者の歩行速度の向上は容易ではありません。まさに“言うは易く行うは難し!”です。
ではどうしていくのが良いのでしょうか?示していきたいと思います!
効率化の鍵は対称性の獲得
脳卒中片麻痺患者の歩行は非対称性や不安定性を特徴としており、これは麻痺側の筋力や筋緊張、関節可動域、感覚、協調運動などの障害が影響しています。やみくもに歩行速度を向上させるよう求めると、麻痺側の下肢に代償的に力を入れたり、非麻痺側の下肢を大きく振ったりすることによって課題達成を果たそうとしてしまい、結果として非対称性を強めることになりかねません。
非対称な歩容で歩くと、歩行にかかるエネルギー消費が増えることで疲れやすくなりますし、非対称な歩容でリハビリを終了するとその後の転倒リスクが増大することも報告されています。1)
したがって、歩行速度の向上については、歩行の対称性についても併せて向上を目指すことが大切と言えます。
脳卒中患者の歩行パフォーマンスの向上特性を調べた研究によると、歩行速度は30%、機能的バランス能力は62%、機能的移動能力は73%が改善されたのに対して、遊脚の対称性、歩幅の対称性が改善したのはそれぞれ21%、14%であったことが分かりました。これは、歩行速度や自立度に比べて、歩行の対称性や安定性の向上が難しいことを示しています。2)
麻痺側の機能を高めるには?
歩行の対称性や安定性の向上には、麻痺側の下肢の支持性や運動性を高めることが必要ですが、これには、麻痺側の筋力や筋緊張、関節可動域、感覚、協調運動などの神経機能の回復が必要となってきます。神経機能の回復には、神経可塑性という神経系の変化能力を活性化することが必要ですが、これには、麻痺側の下肢に適切な刺激や負荷を与えることが必要です。
歩行の対称性や安定性の向上に効果的なリハビリ方法として、課題指向型トレーニングがあります。課題指向型トレーニングとは、患者のニーズや目標に応じた実践的な動作を繰り返し行うことで、神経機能の回復や運動学習を促すトレーニングです。世界的に有効性が示されているスタンダードな訓練であり、手のリハビリにしても歩行のリハビリにしても有効性が報告されています。歩行における課題指向型トレーニングでは、発症から6ヵ月以上が経過した方に対して有効であるとされ、課題によって歩行速度や自立度に加え、バランス能力や運動機能も大きく向上するとされています。3)
ただ、課題指向型トレーニングを行う場合、ただ動作を反復させるのではなく、運動量や負荷など股関節荷重や推進力という歩行の要素に注目することも重要です。歩行練習の練習量は歩数よりも関節運動量が関連している報告もみられるためです。4)
何故重要?股関節荷重について
股関節荷重とは、立位や歩行時に股関節にかかる力のことで、骨盤や下肢の安定性や動きに影響します。股関節に体重がのるということは股関節荷重を増やすことで、麻痺側下肢での支持場面で歩幅を伸ばし、歩行速度を向上させることができます。また、股関節荷重を増やすことで、麻痺側の筋力や筋緊張、感覚、協調運動などの神経機能が改善されることが報告されています。運動学的にも、倒立振り子モデルを再現していく上で獲得を目指していく必要があるものになります。股関節荷重は麻痺側での推進力を形成していく上で避けては通れないものなので、頑張って獲得していきたいですね。長くなってしまったので麻痺側による推進力形成の重要性についてはまた次回に書きたいと思います!
まとめ
・速く歩けると良いことが多い!
・速く歩くには対称性の獲得が大事!
・麻痺側の機能を高めるには課題指向型アプローチの視点が有効!
いかがでしたか?シンプルですが、イージーではないといったところだと思います。
麻痺している下肢に体重をのせるということは、感覚が無い脚に重さをかけるという大きな不安を伴う行為です。そのため適切な課題設定、負荷設定が重要です。やみくもな運動は良い効果をもたらすどころか悪影響を与える影響もはらんでいます。注意して練習に取り組んでいただければと思います!読んでいただいた方の参考になれば幸いです!
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1)Wei TS, Liu PT, Chang LW, Liu SY. Gait asymmetry, ankle spasticity, and depression as independent predictors of falls in ambulatory stroke patients. PLoS One. 2017 May 23;12(5):e0177136. doi: 10.1371/journal.pone.0177136. PMID: 28542281; PMCID: PMC5441600.
2)Patterson KK, Mansfield A, Biasin L, Brunton K, Inness EL, McIlroy WE. Longitudinal changes in poststroke spatiotemporal gait asymmetry over inpatient rehabilitation. Neurorehabil Neural Repair. 2015 Feb;29(2):153-62. doi: 10.1177/1545968314533614. Epub 2014 May 13. PMID: 24826888.
3)Shin, S.Y., Lee, R.K., Spicer, P. et al. Quantifying dosage of physical therapy using lower body kinematics: a longitudinal pilot study on early post-stroke individuals. J NeuroEngineering Rehabil 17, 15 (2020). https://doi.org/10.1186/s12984-020-0655-0