非常にご無沙汰しております!
先回目標に掲げた2ヶ月に一回を守るべく、今回も読者の皆様にお役立ちの情報満載でお送りしていきたいと思います!
認知症を予防するということはどういうことか
日本の認知症高齢者数は、2025年で700万人を超えると予想されており、政府も新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)を掲げるなど、国を挙げた認知症対策が行われています。高齢者の5人に1人が認知症になると予測されている昨今、認知症の発症を未然に食い止める取り組みは高齢者の生活の質を維持する観点に加え、医療・介護費の削減の観点からも社会的意義は高いと感じています。
以前歩くことが認知症予防に繋がりますよということは掲載させてもらいましたので、そちらも併せて確認いただけるとより運動の必要性を認識していただけるかと思います。
認知症で障害される認知機能とは
認知症っていう言葉は聞き慣れてますけど、具体的にはどういう状態になるんですか?
認知症という大きな言葉はかなり周知されてきましたけど、具体的な状態について整理するのは難しいですよね。認知症疾患ガイドライン2017を参考に、下表にまとめるので参考にして下さいね!
認知機能 | 病状名 |
---|---|
注意 | 全般性注意障害(全体的に注意が散漫な状態) |
遂行機能 | 遂行機能障害(物事を最後まで成し遂げられなく状態) |
記憶 | 健忘(よく物事を忘れる状態) |
言語 | 失語(言語の理解や表出が困難になる状態) |
視空間認知 | 構成障害(物体の形や奥行きを認識できなくなる状態) 地誌的失見当識(現在地がどこなのかが分からなくなる状態) 錯視、幻視(実体のないものが見えたり見間違えたりする状態) |
行為 | 失行(やろうと思う行動が上手に行えなくなる状態) |
社会的認知 | 脱抑制(本来なら社会的に我慢できる事柄が我慢出来なくなる状態) |
一言に認知症って言っても、どこの部分が障害されているかによって異なった病状名でされるんですね
そうなんです!
なので認知症かも、と思った時には、上記表に挙げられているどこが障害されているかをまずは把握できると予防ができる可能性があるということですね!
上記表で示したように認知症で障害される認知機能は多岐に渡るため、認知症を予防するためには、1)様々な認知機能の低下を抑える必要があり、2)認知症を予防するための介入がどの認知機能の維持・向上に繋がるかを理解する必要があると言えます。
運動は認知症を予防するのか
健康な高齢者を対象として認知機能の維持向上に効果的な運動の種類と方法についてを解析した文献があるので紹介します。
Exercise interventions for cognitive function in adults older than 50: a systematic review with meta-analysis
Northey JM, Cherbuin N, Pumpa KL, Smee DJ, Rattray B. Exercise interventions for cognitive function in adults older than 50: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2018 Feb;52(3):154-160. doi: 10.1136/bjsports-2016-096587. Epub 2017 Apr 24. PMID: 28438770.
Role of physical exercise on cognitive function in healthy older adults: A systematic review of randomized clinical trials
Sáez de Asteasu ML, Martínez-Velilla N, Zambom-Ferraresi F, Casas-Herrero Á, Izquierdo M. Role of physical exercise on cognitive function in healthy older adults: A systematic review of randomized clinical trials. Ageing Res Rev. 2017 Aug;37:117-134. doi: 10.1016/j.arr.2017.05.007. Epub 2017 Jun 3. PMID: 28587957.
上段は50歳以上を対象とした認知機能のための運動介入をまとめたメタアナリシスになります。こちらの報告によると、「有酸素運動」「レジスタンストレーニング(筋力訓練)、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用」「太極拳」の4つで認知機能の維持向上に有意な効果があると認めています。運動時間は45〜60分、運動頻度は週5回以上、運動強度は中等度以上が効果的とのことでした。
下段は健康な高齢者を対象に「有酸素運動」「レジスタンストレーニング(筋力訓練)、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用」が認知機能に与える影響をメタ解析したものになります。こちらの報告によると、それら全ての運動方法で認知機能は維持・向上されたとしています。
これらの報告から「有酸素運動やレジスタンス運動が認知機能の維持・向上にとって有効である」と言えると考えています。
有酸素運動とレジスタンストレーニングの具体的な実施方法について
有酸素運動
以下の有酸素運動と認知機能の関係について報告された文献を紹介します。
Increased heart rate variability and executive performance after aerobic training in the elderly
Albinet CT, Boucard G, Bouquet CA, Audiffren M. Increased heart rate variability and executive performance after aerobic training in the elderly. Eur J Appl Physiol. 2010 Jul;109(4):617-24. doi: 10.1007/s00421-010-1393-y. Epub 2010 Feb 26. PMID: 20186426.
Chronic endurance exercise training prevents aging-related cognitive decline in healthy older adults: a randomized controlled trial
Muscari A, Giannoni C, Pierpaoli L, Berzigotti A, Maietta P, Foschi E, Ravaioli C, Poggiopollini G, Bianchi G, Magalotti D, Tentoni C, Zoli M. Chronic endurance exercise training prevents aging-related cognitive decline in healthy older adults: a randomized controlled trial. Int J Geriatr Psychiatry. 2010 Oct;25(10):1055-64. doi: 10.1002/gps.2462. PMID: 20033904.
これらによると、Northey らにより報告されていたように、有酸素運動の運動時間は45〜60分、運動の頻度は週5回以上、運動強度は中等度以上が望ましいと考えられます。しかし、中等度以上の運動については身体的な負荷が大きいこともあり、循環器系の疾患を持つ方では実施が難しいことも多いです。また、週5回の運動実施もご自身で管理することが難しいケースも多いように感じます。そのため、事前に専門職による状態把握が行える医療・介護施設で、なるべく多い通所頻度で低負荷から開始していくのが望ましいと言えます。
レジスタンストレーニング
レジスタンストレーニングについては報告も多く見られます。
The impact of resistance exercise on the cognitive function of the elderly
Cassilhas RC, Viana VA, Grassmann V, Santos RT, Santos RF, Tufik S, Mello MT. The impact of resistance exercise on the cognitive function of the elderly. Med Sci Sports Exerc. 2007 Aug;39(8):1401-7. doi: 10.1249/mss.0b013e318060111f. PMID: 17762374.
Resistance training and executive functions: a 12-month randomized controlled trial
Liu-Ambrose T, Nagamatsu LS, Graf P, Beattie BL, Ashe MC, Handy TC. Resistance training and executive functions: a 12-month randomized controlled trial. Arch Intern Med. 2010 Jan 25;170(2):170-8. doi: 10.1001/archinternmed.2009.494. PMID: 20101012; PMCID: PMC3448565.
Enhancing cognitive functioning in the elderly: multicomponent vs resistance training
Forte R, Boreham CA, Leite JC, De Vito G, Brennan L, Gibney ER, Pesce C. Enhancing cognitive functioning in the elderly: multicomponent vs resistance training. Clin Interv Aging. 2013;8:19-27. doi: 10.2147/CIA.S36514. Epub 2013 Jan 10. PMID: 23341738; PMCID: PMC3546758.
これらの報告では、レジスタンストレーニングの具体的な実施方法について、Northeyらの報告によると週5回程度となっていましたが、Liu-Ambroseらの報告では週1回と週2回のレジスタンストレーニング実施で認知機能に対する効果に差はないとされています。また、Forteらの報告でも週2回の介入で遂行機能の向上が認められたと報告されていることからも、認知機能の維持・向上には週2回のレジスタンス運動で十分なのかもしれません。これらの報告を勘案し、レジスタンストレーニングの運動頻度は週2回、10回×4セット、中等度以上の負荷が望ましいと考えられます。
有酸素運動やレジスタンストレーニングによって維持・向上が期待できる能力
先の報告の中で記載されているように運動が何らかの認知機能向上に寄与する可能性は高いですが、どの運動がどの認知機能に特に効果をもたらすかといった統一された見解は、残念ながら今のところ示されてはいません。ですが、有酸素運動、レジスタンストレーニングを複合的に実施していくことで認知機能の改善に繋がっていくことは間違いないと考えています。机上で行う認知訓練で向上すると予測される認知機能の多くが、運動により向上が期待される認知機能(遂行機能、注意機能)と重複していないことから、組み合わせて行っていくことが重要なのかな、なんて考えています。
まとめ
・認知症に対しては、認知訓練(頭の体操)だけではなく有酸素運動やレジスタンストレーニングが有効
・有酸素運動やレジスタンストレーニングといった運動と認知訓練を両方行うことが望ましい
・運動頻度は週2〜5回、60分程度の有酸素運動・10回×4セットのレジスタンストレーニングを集団で行うのが望ましい
いかがでしたか?やっぱり動くってのはとても大事なようですね。
実際にはリスク面や意欲面などで中等度の負荷をかけていくのが難しいことが多いのかなと思います。だからこそ、通所施設に通い、専門職に様子を見てもらいながら運動できるのが一番良いのかなと思います!週に一回から様子をみては?という意見も多く聞かれますが、個人的には週2回から始めて、低い負荷から運動の頻度を確保していくことをオススメします!
積極的に運動して、元気な自分の維持!新たな目標の実現!それぞれに目標を掲げて、運動に取り組んでいっていただけると良いなって思います!見た方の参考になれば幸いです!
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